
昨日、ふと見ていたインスタグラムで、クリスチャン・フレッチャーの若い頃のドキュメントフィルムが流れてきた。ファミリーの映像もあったりして、改めて彼らとのご縁を振り返ってみた。

クリスチャン・フレッチャーといえば、最初にサーフィンでエアーをやった奴で、ハービー・フレッチャーの息子だというのは有名な話だ。なにしろ、親父も相当な人物だけれど、お母さんのデビーは、あの有名なホフマンファミリー。元々ホフマン家といえば、彼女の父親であり、クリスチャンたちの祖父、ウォルター・ホフマンは、カリフォルニア、ダナポイントで、「ダナポイントマフィア」と呼ばれたビッグウエイバーのパイオニア。ハワイとカリフォルニアではファブリックで名を馳せたファミリーだ。クリスチャンは、まさに生粋のサーファーだし、華々しい系譜のあるセレブでもあるんだ。
初めて会ったのは、雑誌の取材で、ハービーとクリスチャン、一緒だった。二人を6×7のカメラで撮ったんだ。ポラロイドを切ってた時代だね。海岸だったから、スタジオで使うようなストロボなんて持って行かなかったけど、とりあえず浜辺に落ちていた竹の棒を立てて、バック紙を仕組んで、二人を撮影をした。
その時、クリスチャンが撮ったポラロイドの裏に「Smoke dope」って書いたんだ。すごいやつだね。まだ16歳かそこらだったからね。今でもそのポラロイド持ってるよ。(ついこの前あった時にも、「そのポラをまだ持ってるよ」って言ったら、クリスチャン、結構受けてたね。)

デビル西岡が、クリスチャンを僕の親父のアトリエに連れてきたのは、初めて会ってから何年か後だった。すっかり立派な大人になってたけど、中身は変わらない。芸術にも造詣の深い一家に育ったクリスチャンらしく、親父の絵を見て敬意を払ってくれているのがよくわかった。親父とクリスチャンの写真を撮ったことが懐かしい。その時撮ったクリスチャンの写真は、デビルの作ってた雑誌、「サイボーグ」の表紙になったね。
実はクリスチャンは、デビルがカリフォルニアに行っていた時に向こうで親しくなったた友達で、デビルのことをすごくリスペクトしていた。デビルが病気で脚を一本失った時には、お見舞いに駆けつけて、トイレが詰まった時に使う吸盤の付いた棒、「スッポン」っていうんだっけ、それを逆さにして、デビルの一本足につけて「これでいいじゃん!」って。きっと、海賊の船長をイメージしてたんだ。クリスチャン流のジョークに笑ったね。
もちろんお葬式の時も真っ先に来た。それでデビルの骨を生まれ故郷の四国にわざわざ持って行ってくれたんだよ。
表向きは、ハードコアだけれど、内面はとても繊細で優しさを持った男だというのを本当に感じたね。

来日するたびに、チャンスがあれば写真を撮らせてもらった。ある日、モヒカンを一つにまとめた強面の彼に、花を1本持ってもらったんだ。でも、その一瞬、とても清らかな表情をするんだ、彼の内面が浮き出たような気がした。
「最高じゃん!」っていう、僕の本のために、その時の写真にコメントちょうだいって言ったら、全く彼らしいコメントが返ってきた。なんて優しいヤツなんだと思った。
写真集「最高じゃん!」に掲載
2016年、カリフォルニアの旅の途中に、ハービーのアトリエを訪ねて行ったんだ。当時、向こうに住んでたNAKI(船木三秀)が案内してくれた。ハービーのうちで撮影をしているときも、わざわざバイクを飛ばして、会いに来てくれたんだ。デビーさんと3人で、なかなかチャンスがないから、写真を撮りたいって言ったら、撮らせてくれて、その3人の写真が撮れるなんて、僕にとっては奇跡的なことだと思った。

その時にハービーのボードコレクションを見せてもらったんだけど、サーフボードがぎっしり積まれた棚の中に、黄色に赤い鏃(やじり)の描かれたボードがあった。「これアート・ブルアーが撮った、表紙になった写真のボードですよね。見てましたよ、最高ですね!」って言ったら、ハービーが喜んでひっっぱり出して見せてくれたんだ。昔、マウイのマアラエアで彼が撮影されたショット、雑誌「SURFER」の表紙になったボードだった。それは、後でハービーがヴィンテージボードのエキジビションを日本で開いた際、目玉となったボードなんだ。

他にもデビッド・ヌヒアが60年代後半か70年代に使ってた、エアブラシで描かれたサイケデリックなボードもあって、「これは、デビッド・ヌヒアのですよね、昔の雑誌で見たことがあります」って言ったら、「そうか、知ってるのか」って、さらに次から次へとボードを引っ張り出してきて、嬉しかった。どのボードにも、語り継がれるようなヒストリーがあって、全てを写真と録音で記録しておけば良かったなと、今になって思う。
そんなボード談義に花が咲いている最中に、デビーさんがミネラルウォーターのボトルを持ってきてくれて、ありがたくいただいた。後でNAKIが、「普段はゲストにそんなことはしないんですよ」っ言ってて、少しは認識してくれたのかな、とホッとした。

実は、ハービーのアトリエで、デビーさんが迎えてくれた時、「あのバンブーの中にハービーが座っている写真はあなたが撮ったのね、良かったわ」って言ってくれたんだ。本当に名誉だよね、彼女に褒めてもらえるなんて。。。
20年以上前に、桝田琢治がハービーとクレッグ・スティシックの二人を日本に呼んだ時、鎌倉のお寺で写真を撮らせてもらったんだ。竹林の中に静かに座っている写真なんだけれど、それがデビーの印象に残ってたんだね。
そんなエピソードがきっかけになって、アトリエでファミリー写真を撮れたんだから。サーフィンと写真をやっていて、本当に良かった。これもまた、Only Knows The Feelingという瞬間だった。この親子との、縁を感じずにはいられない。
※ 使用した写真は、「surfers」、「surfers Ⅱ」より
ウォルター・ホフマン https://www.surfnews.jp/feature/column/77912/
