Vol.16 枡田琢治と山本耀司


2001年だったと思う、プロロングボーダーの枡田琢治から連絡があって、彼が作った媒体『SUPER X MEDIA MAGAZINE』に載せる写真を撮影してもらいたいと持ち掛けられた。

その頃、琢治は京都で460年以上続く友禅の老舗「千總」の社長、西村宗左衛門さんと親しくなって、海外の有名なshaperに削ってもらったロングボードに江戸時代の友禅を入れて「YUZEN ON SURF」というプロジェクトを企画して、そのエキジビジョンを千總ギャラリーで行うことになっていた。

何しろそのボードで琢治がサーフィンするシーンをあのアメリカのレジェンドフォトグラファー、Art Brewerがハワイで撮影したなんて凄い話もあった。会場ではその映像が流されたりしてたのだから、そんな発想自体、画期的な事だった。エキジビションのために海外からサーフィン関係のアーティストを何人か呼んでいた。彼らはそれぞれの作品を友禅をテーマに制作していて、僕はそれぞれのアーテイストやその作品を『SUPER X MEDIA MAGAZINE』の為に撮影した。もちろん西村社長や社員の方や友禅に関わっている作家や職人さん達も撮影させてもらった。

何百年と続く友禅の職人さんたちの手仕事は、絞りを入れる工程や染織の作業もそれぞれ分業で、独立して進行していく。けれど、最終的にはまるで魔法がかけられたように見事に繋がって、「友禅」と言う素晴らしい着物が完成する。まさにアートだ。

当時の僕としては、こんなチャンスはなかなか無いと思って気合いが入ってたんだろう、わざわざ中判カメラを持ち込んで撮影したんだ。その時に撮影した写真は、のちに『SUPER X MEDIA MAGAZINE』の集大成と言える『MEDIA X CONBAIN』にも掲載された。

「千總」という会社は「S.NISHIMURA」という、千總のクリエイティブ事業を担う別会社もあって、西村さんの奥さんがその運営に携わっていらした。デザイナーの山本耀司さん(Yohji Yamamoto)は着物のテキスタイルを使う際、その友禅を使ってたという話を耳にした。きっと琢治はYohjiさんとそのご縁から繋がったのかもしれない。

エキジビションからしばらくして、ひょんなことからYohjiさんと西村さんに琢治がサーフィンを教えるという話が持ち上がって、琢治の鎌倉の家に2人が訪ねて来ることになり、一緒に波乗りをしたんだ。琢治が道具の準備をしている間に、Yohjiさんが芝生の上でストレッチを始めた。軽やかなその動きは、日頃から体を動かしていることが一目でわかるほどだった。思わず声をかけると「僕は空手をやっていて、自宅にも道場があるんですよ」と。のちのち知ったのだけれど、黒帯までとっているのだそう。運動に関してや武道にも興味がある様子で、体を動かすことが好きだと話してくれて、偶然にもYohjiさんは僕が中学まで通っていた暁星の先輩だということもわかった。

いざサーフィンをしよう、とみんなで海岸に向かったんだ。お二人とも果敢にチャレンジしてた。Yohjiさんはボードに俊敏な動きでまたがって、初めてではなかなか難しいニーパドルもしはじめた。なんと2回目で立ち上がってそのまま乗っていったのには驚いた。流石に運動神経がいいなって思ったね。ニコニコしながら楽しんでいたその様子を、海の中から撮影したのがこの写真なんだ。

その日、Yohjiさんはトランクスを持って来てなくて、僕のを使ってもらった。鎌倉の友達が作っている「Kalipoa」というブランドのオレンジ色のトランクスだった。Yohjiさんは「ブラック」というイメージだったから、どうかなって思ったんだけれど、でも、使ってくれて、僕のオレンジのトランクスを履いてくれたのが、なんだか嬉しかった。

2001年の夏には、「YUZEN ON SURF」は東京でも開催された。その当時、サーフィン業界はまだ感度の高いクリエーターとの交流はあまりなかったんだけれど、琢治は既にヒステリックグラマーのノブくんや野口強くん、NIGOくんたちともコラボしていた。いつもやる事が早過ぎて、時代の何歩も先を行ってるんだよね。

それだけの話なんだけれどね。

『SUPER X MEDIA MAGAZINE』に掲載した記事を琢治が海外の本にも出す予定だったんだけれど、Yohjiさんのプレスの方からストップがかかったのだとか。

僕が思うに、Yohjiさん的には問題なかったんだろうけど、多分、対外的なイメージが問題になったのかもしれないね。

トランクスの色がブラックだったらOKだったのかな。

2年くらい前にKelly Slaterの着ている洋服のブランド「OUTER KNOWEN]のクリエイティブディレクターのJohn Mooreが日本に来ていたとき、鎌倉と葉山を案内したんだ。彼は僕がインスタにアップしたYohji さんの写真を「最高!」と言ってくれたのも嬉しかったね。さすがにYohji さんをリスペクトしているだけあって、Johnのプロデュースする服はシックなカラーで統一されている。今までのサーフブランドとはひと味違ったセンスで、あのKelly もその服のお陰で、さらにイメージアップされたような気がする。

 

「YUZEN ON SURF」YouTube

https://youtu.be/R4HS7nmfzX8?si=_dkAjxv-OM6uBYe7

友禅をテーマにプロジェクトを企画した琢治のストーリー。先述のサーフシーンやエキジビションの模様、琢治のライディングまでが収められている。カリフォルニアで琢治が紹介してくれたアーティスト、Kevin Ancellもこの京都のエキビジョンのために来日していた。

 

枡田琢治

鎌倉出身。元プロロングボードチャンピオン。カリフォルニア、マリブを拠点とし、メディアクリエーターとして活躍。映画監督として手掛けたドキュメンタリー、『BUNKER77』は、異端のサーファー、バンカー・スプレックルスの刹那的な生涯を描いた秀作。